要約
急性中耳炎は鼓膜の内側に鼻の奥の細菌が入って起こります。抗生剤で治療します。
鼓膜の内側の空間「中耳」は「耳管」という管で鼻と喉の間の部位「上咽頭」とつながっているため、中耳炎は鼻の奥の細菌などが耳管経由で中耳に感染して発症します。鼻すすり癖は細菌が中耳に入る直接的な原因となります。
主な症状
風邪や鼻炎などの鼻水・鼻づまりに遅れて起こる、急な耳の痛みや発熱・耳閉感・聞こえにくさなどです。
診断方法
鼓膜を見れば診断できます。鼓膜の充血のみの軽症例、鼓膜が腫れて膿が溜まる中等症例、鼓膜から耳漏(みみだれ)がしみだしている重症例などに分類します。
治療法
細菌感染ですので急性期には抗菌剤で治療します。痛みが続いていれば鎮痛剤を頓服(症状のあるときだけ内服)します。
去痰剤が中耳に溜まった膿の排泄および原因となった鼻づまりの改善を助けるので一緒に内服します。アレルギー性鼻炎を合併している場合は点鼻薬での鼻炎治療を併用します。鼻をかめないお子さんには鼻汁の吸引も大事です。耳鼻科受診時に行うネブライザー療法はあらかじめ吸引してから行うと上咽頭までミスト状の薬剤が届くので補助療法として効果的です。(3歳以上が対象です)
経過
小児の場合はまず3-5日間抗生剤を内服して効果があるか判定します。
①とても良く効いている場合は追加の投薬が必要ありません
②効果はあるがまだ完治していない場合は継続処方します。
③効果がなければ耐性菌の可能性を考えて第二の抗生剤に変更します。
急性中耳炎の痛みや発熱のピークは数時間程度です。もし抗生剤を内服しなくても鎮痛剤を1-2回内服すればひとまずひどい痛みは消失します。ただし痛みを訴えなくなっても治ったわけではありません。膿が残っている場合が多いので再診して経過を診せに来てください。 なお軽症例では鎮痛剤のみで経過を見ていただくこともあります。
長引く急性中耳炎
膿が溜まったり、耳漏があった中耳炎では抗生剤の働きで細菌の活動がおさまっても中耳に液体がしばらく残ってしまうことがしばしばあります。この状態では痛みはありませんが音がこもって聞こえにくい状況です。この液体は耳管経由で空気が中耳に送られると置換されて消失します。このため去痰剤などの内服だけ継続して液体がなくなるのを待ちます。アレルギー性鼻炎の関与があれば鼻炎治療も行います。鼻水・鼻づまりがなく、鼻呼吸ができていれば液体がなくなり、正常に戻ります。鼻水・鼻づまりが長引くほど液体がなくなるまで時間がかかります。数週間治らないときは滲出性中耳炎に移行してしまったと診断します。
中耳炎になってしまったら
小児にとって中耳炎は小学校入学までに平均1-2回かかるといわれているほど頻度の高い病気です。とくに2歳前に中耳炎になると何度もなってしまうことが多いといわれています。しかしながら適切な治療を行えば大人になってからの難聴につながってしまうのはほんの一部にすぎません。多くのお子さんにとっては小学校1-2年を過ぎてしまえば罹患することはほとんどなくなる病気ですから過剰に心配する必要はありません。
急性中耳炎Q&A
- Q どうして中耳炎になったの?
A 鼻水の中の病原菌が耳に行って起こります。鼻すすりが最大の原因です。咳き込んでいる時にも空気圧がかかって菌が耳に行きやすくなります。 - Q 痛みはいつまで続くの? また痛くなるの?
A 痛みは最初の数時間程度で落ち着くことが多いのですが痛がらなくなったといっても治ったわけではありません。鼓膜が腫れる途中が特に痛みが強く、そのあとは主に詰まり感や聞こえにくさを感じています。痛みは頓服の痛み止めでおさまります。
- Q 治療はどうするの?鼓膜切開するの?
A 細菌感染なので基本は抗生剤の内服です。どうしても膿が引かない場合などに切開することもありますが内服治療が先です。
薬は薬剤アレルギーがなければ第一にペニシリン系抗生剤、第二に耐性菌用抗生剤を用います。 - Q お風呂・プールは?園には行っていいの?
A お風呂は問題ないです。プールは幼児の水遊び程度、保育園幼稚園で入るプール程度でしたら結構です。スイミングスクールで本格的に泳ぐのは悪影響がありますので治るまで中止してください。
中耳炎そのものは伝染しないので治療途中でも通園してかまいませんが痛くなった当日は園でもう一度痛くなるかもしれません。中耳炎のきっかけとなった「鼻水の出る風邪」は伝染しますので一般的な「風邪気味」のときに園へいくかどうするかという観点で判断してください - Q 一回なるとなりやすくなるの?
A 中耳炎は子供の半数以上が一度は経験する病気ですから、1~2回ぐらいはよくあることと考えてください。自分で鼻をかめる年齢になると罹患しにくくなります。初めて中耳炎になった年齢が小さいほど繰り返すことが多く、2歳未満で経験すると複数回罹患すると考えておいてください。鼻が悪かったり、鼻の奥が狭(アデノイドが大きい)かったり、鼻すすりがくせになると繰り返しやすくなります。乳幼児ではおしゃぶりや指吸いの癖があると中耳炎になりやすくなります。 - Q 予防方法は?
A とにかく鼻を良くすることです。鼻をかむように頻繁に促すとか鼻をかめないお子さんの鼻水を吸ってあげるなどの地道なケアが中耳炎を減らします。
また、肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による中耳炎になる可能性を減らします。(中耳炎を起こす肺炎球菌のすべての株に対応していないので安心はできませんが中耳炎を減らすことは確かです) - Q 点耳薬の使い方は?
A 点耳する耳を上にして横になり、5-6滴を目安に耳の穴に滴下します。そのまま10分ほど安静にして吸収させたらティッシュなどを耳にあてて反対向きになり、残った液体を出します。耳の穴に残った液体は綿棒などで拭ったりせずに自然乾燥させてください。もしお子さんが2-3分ほどで起きて薬を出してしまったらもう一度繰り返しても結構です。