重症花粉症の治療(ゾレア)

一般的な花粉症治療である内服・点鼻などで十分な改善が得られない、症状の重い花粉症の方限定で注射(商品名ゾレア/薬品名オマリズマブ)による治療を行っています。ゾレアは4週(または2週)に一度の注射でアレルギー反応の出発点となるアレルギー抗体(IgE抗体)をブロックすることで従来の治療法とは異なる効果が期待できます。(ただし治療を受けるのにはいくつかの条件があり、症状は重くても採血結果によっては治療の対象とならない場合があります。1回目の注射は最短で3回目の受診時になります。)

治療の対象
重症のスギ花粉症患者さんが対象です。重症の基準を分かりやすく言うと
「花粉症の時期に鼻閉が非常に強く、1日のうちかなりの時間に口呼吸せざるを得ない」または
「1日にくしゃみ発作の回数(連続しても1回とします)または鼻をかむ回数が11回以上」となります。
また血液検査ではスギについてクラス3以上、血中総IgEが30IU/mL以上であることも必須です。
このような重症の患者さんで内服や点鼻では十分な改善が見られない場合に限って注射治療の対象となります。年齢は12歳以上が対象です。
注射内容の決定
注射器を使った採血を行って血中総IgEとスギIgEを測定します。測定値(と体重)により注射の量・間隔(4週おきか2週おきか)が決まります。
治療の流れ(初診時)
 診察及び問診で重症花粉症であることを確認します。過去の血液検査データがあれば参考のためご持参ください。
当院にて少なくとも血中総IgEとスギIgEは再検査します。抗アレルギー薬、点鼻薬等を新たに処方して1週間以上使用していただきます。
治療の流れ(2回目受診時)
 初診時に処方した治療薬では効果不十分であることを確認します。血液検査でスギIgEがクラス3以上であることを確認した上で、血中総IgE値と体重から注射量と間隔(4週おきか2週おきか)が決まりますので、実際の治療スケジュールを立てます(予約を取ります)。なお高額な薬でかつ消費期限が短いので予定に合わせた在庫しか置くことが出来ません。
治療の流れ(3回目受診時)
 予約に合わせて受診していただきます。受付してから注射の準備(薬の溶解に20分ほどかかる)をしますのでお待ちいただくことになります。初回注射後30分ほど待合室で体調の変化がないか待機していただきます(コロナワクチン注射と同じです)
治療の流れ(4回目以降)
4週間毎(血液検査結果によっては2週間毎)に注射を行います。最長で12週間程度継続します。
効果
効果が発現するのは早くて数日後、遅くとも2週間以内と言われています。現時点で70-90%の重症花粉症患者さんに有効と考えられています。
費用
注射の量が血液データと体重によって決まるので、費用も一人ひとり異なります。保険診療ですが、自己負担率3割の成人の場合最も少なくて1回の注射に約9千円(4週間に1回)かかり、最も高額な場合、1回約7万円(2週間に1回)かかります。実際にはこの間の金額におさまる場合がほとんどです採血費用や初診料・再診料・処方料は別途かかります。
受診時期
 花粉症のピーク前に効果を発揮するためには1月中に採血等を行って1月末から2月半ばまでに1回目の注射を行うのが理想的です。
副作用とリスク
 ゾレア注射によって重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こす可能性は0.1~0.2%程度です。副反応として注射部位の腫れを除けば頭痛が5%未満、眠気、めまい、倦怠感などが1%未満に見られます。