鼓膜チューブ

滲出性中耳炎と診断されたら、年齢にあった方法の聴力検査と中耳の空気圧の検査を行いながら経過を観察します。当院では長期化した滲出性中耳炎に対し、メスを用いないレーザー鼓膜切開を行った上でチューブ挿入術を行っています。

対象

① 小児の場合 3か月を経過しても改善が見られない両側性滲出性中耳炎で、明らかに聴力が低下している場合または鼓膜に変形が続く場合
② 小児で一側だけの滲出性中耳炎の場合は3か月を経過して鼓膜の変形が続く場合(正常な耳が良く聞こえているから変形がなければ3か月以上経過観察してもよい)
③ 10歳以上なら学業のことも考えて早めの手術希望に応じます。
④ 成人の場合は希望次第で診療中に行います。

※3か月の経過観察は小児耳鼻科学会の指針に基づくものです

手技の実際

小児の場合は予約制で月・火・木の診療終了後に行っています。成人の場合は外来診療中に随時行います。鼓膜切開術(鼓膜切開のページをお読みください)を行い、手術用顕微鏡で見ながら切開孔にチューブを挟み込むことができれば手術終了です。チューブには太い長期留置型と細い短期留置型とがあり、短期型は短いと1か月、長くても1年程度で自然に押し出される形で抜けます。(抜けたチューブは耳垢とともに外耳道にくっついた状態で見つかります)長期留置型は短期留置型での自然脱落を繰り返した患者さんにのみお勧めしています。

スプリット型チューブ(短期型)

挿入前(5歳児)

                                挿入後

チューブ挿入後

挿入後に痛むことはほとんどありません。耳漏(耳だれ)はあってもすぐ止まることがほとんどです。挿入当初はチューブが動きやすいので2日間は激しい運動は避けてください。入浴は当日、洗髪は翌日から可能です。中耳に細菌感染が残っていると耳漏が続くことがありますので翌々日以降も続く場合は受診してください。耳漏がなければ翌週の受診で結構です。術後の診察で問題がなければ1-2か月に一回の通院となります。スイミングは耳栓をして行うことになりますが幼児の水遊びや浮輪で遊ぶ程度なら耳栓の必要もありません。

注意点

チューブの効果は聴力改善と鼓膜の変形防止であり、とくに聴力改善についてはほぼ確実です。急性中耳炎を何度も繰り返していた幼児でもチューブが入っている限り中耳炎で痛い思いをすることは減り、もしなってしまってもチューブが入っているために点耳抗生剤で治療できるので内服抗生剤の使用量が大きく減ります。
逆にチューブの欠点はチューブ長期挿入後に穿孔が残ることですが当院採用の短期型スプリットチューブの穿孔残存率は1%程度と非常に低くなっております。(長期型は10~30%)また長期的にはチューブが入っていた周囲の鼓膜に石灰成分が沈着(石灰化)して白く見えることもありますが聴力に有意な低下はきたさないといわれています。
鼓膜チューブは数か月程度で自然に抜けてしまう治療法ですが、特に小児では成長とともにいずれは解決することが多い病気に対する中期的な治療法として有効性が高く、世界中で最もたくさん行われている手術の一つといわれています。

費用

保険診療です。3割負担の成人で自己負担額が1万円程度になります。