滲出性中耳炎

要約 

耳に水が溜まり、痛みより難聴を起こす中耳炎です。鼻から耳へ空気が入らないために生じます。小児では鼻がかめなかったり、鼻の奥の構造が狭かったりするため長引くことの多い中耳炎です。

滲出性中耳炎は鼓膜の内側の空間「中耳」に浸出液が溜まった状態が続くと診断します。中耳の空気は「耳管」という管で鼻と喉の間の部位「上咽頭」から送られていますが、滲出性中耳炎は耳管から空気が送られないために中耳が陰圧になり、鼓膜が凹んだ上に粘膜から体液がにじみ出て溜まった状態です。

発症の仕組み

  • ① 急性中耳炎(細菌感染で痛くなる中耳炎)発症後に中耳に溜まった膿汁が抗生剤などの働きで滲出液に替わってから排出されない。

  • ② 慢性的な後鼻漏(鼻水が喉に落ちる)があり、耳管の入口をふさぐ。

  • ③ 耳管の入口の後ろにあるアデノイドという扁桃腺と類似の組織が大きいため耳管の入口がふさがれる。(小児のみ)などがあります。

小児の場合①~③すべての要因が重なって治りにくいことがあります。とくに鼻すすり癖は耳管が塞がる最も直接的な原因です

主な症状

耳閉感・難聴です。子供の場合聞き返しが増えたり、TVの音を大きくする、音に対する反応が悪くなることなどです。

診断方法

鼓膜を見れば診断できることが多いのですが、鼓膜の動きやすさと気圧を測る検査や聴力検査(幼児以外)も行って評価します。

治療法

中耳に細菌感染が残っていたり、副鼻腔炎があれば抗菌剤で治療しますが、ほとんどの場合必要ありません。鼻呼吸ができるようにならなければ治りませんので鼻の治療をします。去痰剤が中耳に溜まった膿の排泄および原因となった鼻づまりの改善を助けるので一緒に内服します。鼻アレルギーを合併している場合は鼻炎治療を行います。鼻をかめないお子さんには鼻汁の吸引も大事です。耳鼻科受診時に行うネブライザー療法はあらかじめ吸引してから行うと上咽頭までミスト状の薬剤が届くので補助療法として効果的です。(3歳以上が対象です)

経過

この浸出液は耳管経由で空気が中耳に送られると置換されて消失します。鼻汁・鼻閉が改善しても消失しない場合はアデノイドが大きい(小児)か耳管の働きが悪くなっていると考えられます。アデノイドはファイバー内視鏡(小児用もあります)で確認できます。鼻さえ良ければ服薬なしで回復することを期待して経過観察します。小児の場合3か月待っても改善がない場合鼓膜切開や鼓膜チューブ挿入を検討します。成人の場合は希望次第で早めに切開します。

滲出性中耳炎になったら

子供に多い病気ですが、完治までに時間がかかると考えてください。痛みを訴えませんが、本来の聴力が発揮されていない状態であり、大人なら長くは待てません。長期的にはアデノイドが縮小し、上咽頭が広くなる7歳以降に自然と治る傾向にあります。水泳は鼻に良くないのでおすすめしません。幼児の水遊び程度なら全く影響ありません。